顕彰事業
(2020年)
第50回 機械工業デザイン賞IDEA 入賞
工業製品機械デザイン
光干渉断層計 OCT-S1 (キヤノン)
光の干渉を利用して眼球の網膜や血管などの構造を断層画像として撮影する眼科機器。人工知能(AI)を用いた画像ノイズ低減技術や、同じ撮影位置で複数回撮影した画像を高精度に重ね合わせる技術を搭載し、高精細な画像を作成する。眼底の3次元(3D)画像を広範囲かつ深部までを撮影可能で、効率的に精密検査ができる。
開発者コメント
総合デザインセンター 主幹 関根 哲也
メディカル事業本部 佐藤 雄三
1. 開発の発端となった最も重要な課題はどのようなことでしょうか。
眼底網膜の周辺部の病変を撮影するOCTが求められていた。固視が安定しない患者さんにとって目線を動かして周辺部位を撮影するのが困難であった。症状が重い人ほど(=診断したい)困難であった。
そこから、広画角にとれるOCTが欲しいというニーズがあり、一度に高画質で撮影するOCTを開発する必要があった。
2. 課題解決までのご苦労と、ブレークスルーのポイントをお教えください。
広画角にすると、断層像が折れ曲がるという課題が発生した。高速・広画角・高侵達にするためSS(波長掃引型)-OCTを採用した。高侵達にするためには、高周波信号を取得および処理しなくてはいけないので、画像構築に必要な複数の技術を搭載した。
広画角を達成するために、被験者の接触(=レンズとの距離)とのバランスを考えて非球面レンズを用いた光学技術を搭載した。
3. 技術者として、ユーザーに向けたメッセージをお願いします。
OCT-S1は医師や技師の皆様、また被検者の皆様にとっても、いかに快適で使いやすい機器として仕上げるかに注力させていただきました。単に機能を実現するだけではなく、安心感を与えるフォルムや、高性能な機器を使いこなす医師や技師の皆様の誇りにもつながる、高品位な表現も追求いたしました。OCT-S1が今後の眼科医療の発展に少しでも貢献できれば幸いです。